2010/03/07

心に染み入るヤルセナサ

昨年、大手小町
“ラストで「あっ!」どんでん返しの面白い本”というトピを見てから、
岡嶋二人・井上夢人の作品を読み始めた。

クラインの壷
99%の誘拐
ダレカガナカニイル…
チョコレートゲーム
オルファクトグラム
プラスティック
メドゥサ、鏡をごらん

上記のような順番で、井上夢人作品を中心に。

最初“クラインの壷”を読み終わったときは、
確かにどんでん返しはあったものの、もやもやした読後感で、
特に同じ筆者のモノを読んでみようとは思ってもなかった。

ただ、文庫の解説でも述べられていたけれど、
舞台設定の先見性は本当に目を見張るものがあった。
事実、将来の娯楽は限りなく作中で示されたような
体感的なものへとなってきている。

その後、間を置いて数冊読んでみたところ、
“ダレカガナカニイル…”にかなり心を打たれた。
ホント、自分の中ではこれが井上作品のベスト。
この後も何冊か読んだけれど、まだこの本を超えるものは無い。

一連の井上夢人作品を読んでみて、
輪廻や二重体験、メビウスの輪的設定(そのまんま“クラインの壷”だけれど)
といった‘ループ的要素’が、半数ぐらいの作品にあった。

けれど、‘ループ的要素’がある作品のほとんどは、
明確な終わりが読者に印象付けられないため
‘読後の不満足感’を伴うものが多かった。

そんな中“ダレカガナカニイル…”については、
最後はある意味、‘ループ的要素’によって残酷な結果に終わるけれど、
逆にそれにより純愛が強調されていることで
比較的スッキリした読後感になっていることが、
自分の中でこの本が傑作になっている一因だと思う。

また、ミステリーと思って読み始めたものの、
現代宗教をスパイスに加えて、
実のところラブストーリーですか!という多様な内容もよかった。
どんでん返しではないけれど、
残り数ページで今までの伏線が一気に回収される
カタルシスはかなりのモノでもあるし。