2007/05/05

幼年期の終わりに

同監督作品の“ほしのこえ”が大好きなため、
GW中、帰省した大阪で“秒速5センチメートル”を観てきました。

で、
見終わったあとは、正直ズーーンと落ち込みました。
心の奥底の忘れかけていた想い出、ポッカリ空いた虚無感と
向かい遭わされたような、そんな感じでした。

前作“雲のむこう、約束の場所”や前々作“ほしのこえ”も、
“初恋×宇宙” “初恋×夢”といったカタチで
初恋というテーマを中心に置いた作品だった。
途中に、人生への挫折や思春期特有のモラトリアム的な停滞を経験しながらも、
フィナーレは初恋の成就、
そして、新たな旅立ちへの希望を感じさせる作品だった。

替わって今作。
第1話・第2話では、語り手ごとの初恋を
各々の年齢・地域設定に応じて、豊かに表現している。
各話の終わりも、全ての主要人物にとって
未来への希望をもったカタチで、筆が置かれていた。

そして、最終話=第3話では
成長した彼等の行く末が描かれているのだけれども、
誰一人として青春時代の初恋が
そのまま現在の幸せに直結している人物はいないという状況で始まる。
そんな中で、各人がそれぞれの初恋と向き合い、そして当時の感情と邂逅し、
別々の道へと進んでいく過程が描かれている。

そう、今までの作品にみられる予定調和(初恋の成就)が、
見事に壊れている今作ゆえに、
慣例を期待して鑑賞し、
それに裏切られたため、上映終了後
自分自身が暗く落ち込んだのかもしれない。
はたまた初恋の儚さに同調したのだろうか。

ただ、僕は思う。
この作品は、新海誠監督のマイルストーンだ。
この作品で新たな表現をし、そして岐路に立ち、
別のステージへと進む一歩を踏み締めていっているのだと。


補足になりますが、
美術や音楽も今までの作品とは若干違いが感じられました。
美術スタッフは前作と同じかたなのですが
背景の筆遣いが平凡に感じた部分が幾らかありました。
第1話の雪の表現などは、明らかに“違ってるな”と思いました。
また、音楽も主題歌“One more time,One more chance”が様々な場面で
アレンジされて使われているため
今までで一番天門さんの色の薄いものと感じました。
こちらのほうは、エンドロールでしっとりと天門musicしているので
さして違和感は感じませんでしたが。