2009/05/31

伝奇じゃない

坂東 真砂子の“死国”。
表紙や書籍紹介文から伝奇モノと思って購入。

もちろん伝奇っぽい部分も多々あったけれど、
読後の感想としては、それらはあまり心に残らず、
むしろ、大人になってから今までの人生を振り返って思う
無常感・寂寥感が印象的だった。

読み始める前に期待していたオカルト色が
弱く感じる原因は、ヒロインにある。

実はこのヒロインはほとんど伝奇に興味がない。
ヒロインはもっぱら久方ぶりに帰った田舎で、
過去の同窓生たちの変容・
同窓生各々が持つ現在の生活と自身の過去を
比較・顧みることに終始している。

作中では代わりに、他の3・4人の人々に視点が切り替わり、
四国の持つ歴史・日本誕生における四国の起源性・舞台となる寒村の特異性は
彼らを通して語られていく。

そのため、思った以上に伝奇ムードが感じられず
(そんな中終盤はかなり盛り上がるけれど)、
むしろ、都市と地方を差異や人々の人生観などを
考えさせられてしまう作品、
少し期待はずれな作品になっていた。