2007/02/04

無間道から死の狂騒へ再構築

原作映画“インファナル・アフェア”が大好きなため、
そのリメイクといわれる“ディパーテッド”を鑑賞。

結局、自分の意識に「オリジナルは名作」との刷り込みが強いのだろうか、
総合的にみて原作には劣るかなと感じた。

まず、自分の中でこの映画に馴染めなかった8割がたの大きな問題として、
女医(ヴェラ・ファーミガ)は他にイイ人がいなかったのだろうか?という疑問が。
民間精神科医として自立すれば公務員医師よりも数段の収入増が見込まれるのに、
あえてその公の機関で職に留まっている
公僕としての誠実さはこの人でも伝わってくるのだが、
原作で演じていたケリー・チャンが持っていた精神科医としての
冷静さ・知的さのイメージが全くないのは大問題。
シリアスなストーリーの中、彼女ひとりだけ表情がひょうきん過ぎます。ホント。

また、主演のディカプリオをはじめ他の役者の絶演に対して、
好敵手マット・デイモン の演技がどうにも印象が薄く、起伏に欠けたものだった。
おそらく顔であんまり演技ができてないのでは。
そのため、2時間半も映画を観ているはずなのに、後で思い出すのは
ディカプリオの苦虫を噛んだような苦悩の表情や
ジャック・ニコルソンの大胆不敵な親分面、
そして別の意味で印象的な女医の顔がほとんど。

ストーリに関していえば、
オリジナルが非常に主題に的を絞ったシナリオ運びをしているのに対して、
こちらはとてもハリウッド的で、金と愛をスパイスに加えて
話としての厚みを増しているな、という感じでした。

この点については、あえてどちらが良い・悪いとは言えず、
ボリュームが増したにもかかわらず
映画では前半から中盤にかけて多くの時間を割いて状況説明を行なっているので、
新要素が不完全燃焼になっているかと言われれば、決してそんなことは無い。
むしろ、人間関係をより多様に演出できていると思う。
ただ、その説明的な前半部分が後半の物語の急展開に比べて
とても気だるくまっどろっこしいので、中だるみのを感じてしまうのもまた事実。
ゆえに、原作のシンプルさを知るものとしては、
あえてゴテゴテにしなくても…とも思ってしまうのです。

急展開後のラストは、
無常観がひしひし感じられるようにうまくまとまっている。
原作以上に、組織に踊らされるイヌやネズミの儚さ・やるせなさが
演出されていた。

結果、リメイク作品として観た場合はどうしてもオリジナルには劣るけれど、
一つの再構築された映画としてはそれなりでした。

★★


ちなみに、あの手紙の中身は家族写真なのかな?